『働くことがイヤな人のための本』中島義道
中島義道といえば、現代の哲学研究の第一人者として、よく本を読んだ学生などには当たり前に知られている。
だから、表題から一般に期待するようなことは書いてない。
「働くって幸せなことなんだ」みたいな、直球ボールを投げてこない。
膨大な数の男たちが地から湧いて出たように密集していた。みんな「働きたいんだ」と思った。そして、前後左右の背広姿の男たちをぼんやり見ながら、俺はコイツらと一緒に働きたくないと思った。そこには果てしない常識的世界が広がっているような気がした。
自分の仕事に大いに生きがいを感じている人は、私にはどうでもいいのだ。勝手にしてくださいと言うだけ。だが、そうではない膨大な数の人は放っておけない。私の関心は、当面の苦境にどう対処するかではない。命を懸けるような仕事を見いだせないのはゴク普通のことであると思う。そのことをはっきりと見さだめて、むしろなんの生きがいを感じなくとも、仕事をすることの意味を問うていきたい。
引用だらけになってしまった。
ある日火がついたように起業を決意し、あくる日その決意に水を差すような意見を求める筆者の傾向は、自己防衛的なことかもしれない。