『人生の主導権を取り戻す「早起き」の技術』古川武士
ケチケチ精神と「ゆとり」
「超集中」「エネルギー」「生産性」「価値」…こういう言葉が多様されている本だ。読んでいると、どこか緊張感があって、疲れた。
知識ビジネスマンの世界がelaborateされて、「いかに生産性を高めるか」という議論のターゲットとして、労働者の生活スタイルの隅々まで搾取されるようになった。「朝活」とかが推奨されるようになって、会社に足を踏み入れた瞬間から、いや、起床時間や睡眠すらコントロールして、ワーキングアワーの生産性を上げようということになっている。恐ろしい事態だが、長くは続かないトレンドでもある。
飲料のテレビコマーシャルで、「だれとだれはコワーキングスペース、だれとだれは有給消化中、だれとだれはテレワーク…みんな会社に来てないですよ」というような会話がされていた。「この地球に、大げさなオフィスは必要なくなった」。「ワーキングアワー」という概念も、そのうち死語になるかもしれない。
何よりも長時間労働を避けることです。長時間やるより、単位時間あたりの生産性が高いことに達成感を覚え、価値を感じる自分をつくりましょう。
ダラダラ仕事する時間が10分でもあれば、罪悪感を持つ。仕事が効率的に進んだら多少、未完了の仕事があってもOKとすることです。
さらに、家に帰って好きなことをやって、精神的に満足度を高めるようにしてください。そうする、次の日のエネルギーはとても高く、集中ができます。
どんなに社会が成熟しても、テレワークとはいかない仕事がある。そんな仕事に従事する労働者にとっては、示唆に富む、当たり前の連続のようなライフスタイルの実践。でも、眠りや、余暇を生産性のためにコントロールしようという発想は、どこかおかしい。労働者の頭から爪先までを、支配しようとするな。行き当たりばったりの仕事の流儀が、何かを産むこともあるだろう。睡眠時間や、感情の出し入れさえ図って、「さあ、脳よ、何か産め」と、魔法の杖をふってみたところで、より無力な消費者を搾取する方法しか考えつかないことだろう。
今回は「早起き」にテーマを絞ってることと、加えて、知識ビジネスマンらしくビジネスマンの前提をこれっぽっちも疑っていないことから説明不足になることから、古川氏は筆者に批判されてしまった。しかしながら、「習慣化」を技術として数えあげ、エキスパートとして売り込みをかけているところは、感嘆するところもある。